裁判傍聴ブログ

旭川地裁を中心に裁判傍聴記を書いています

裁判傍聴記9:ウソはついても通じない

ウソはどれだけついても構わない。失うものを考えなければ。

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有印私文書偽造という珍しい罪名の裁判の傍聴をしました。被告人は赤茶髪の固太り、色黒の38歳という男です。

するどい目つき、ただものではありません。保釈されているので傍聴人席から被告人席に入っていきました。この被告人の視界に入るのがちょっと怖かった裁判でした。

終わったあと私は「本当にこんな人間がいるんだなあ、関わりあいにならなくてよかったなあ」としみじみ思った体験です。

 

有印私文書偽造とは

12月の旭川の国道で事故が起きました。被告と仲間が乗ったレガシィに後ろからクラウンが衝突したのです。物損があったのかはわかりませんでしたが、被告は「首が痛い」といい入院します。

最初の病院を1週間で移ります。「治療が合わなかったんですよね」と知り合いの整骨院へ。そこで103日間の入院をし、79万円分の休業補償を請求します。

請求先はあいおい損保です。休業補償は認められ17万円分を受け取った時点で別の事故が起きました。

その事故がどのようなものかは裁判で語られません。ですがそこで被告は「無職」と書いたのです。そのことがあいおい損保に伝わり「おかしくね?」となりました。

この休業補償を巡る争いが「有印私文書偽造」となり裁判になりました。傍聴席にはスーツの軍団が10人ほどいます。間違いなくあいおい損保の人間でしょう。

 

会社員なの?無職なの?

被告は○○という会社に勤めたことにしていました。それは「知人の会社」であり、かつ「経営側」でもあったということです。ネットで調べましたがその会社のHPはなく、何をやっているのかよくわからないものでした。

告訴内容自体は認めているので、被告の職業については深く追及されませんでした。

 

首は痛いの?

最初に入院した病院で被告は「全治3週間」の診断を受けています。でも1週間で転院するという怪しさです。「ほんとに治療があわなかったの?」と裁判長に聞かれると被告がしゃべり始めました。

「いや~ホント治療が合わなくて、実はまだ後遺症があって痛いんですよ。自分の知ってる整骨院じゃないと痛くて痛くて耐えられなかったんです」

はあ、病院が駄目で整骨院がねえ。

ムチウチ症などは証拠がなくてもなれます。レントゲンに映らなくても「痛い」と患者が言えば医者は診断書を書くしかないようです。それがバレバレのウソでも医者の診断書を貰えるのがムチウチです。

車の追突が原因ということですが、12月の凍結路面の事故というのはフレンチキスのようなものだったのではないでしょうか。なぜなら同乗していた他の仲間のことについて触れられていないからです。なぜか被告だけが全治108日のムチウチになりました。

 

79万なの?17万なの?

請求額の79万についてもつっこまれます。「80万以上だと税金かかるからでしょ?」と検事に言われて「いえ!そんなことありません」ときっぱり。

で、ここからが面白かったのですが、被告は罪を認め「全額弁償します」という書類にサインしています。被告が受け取った休業補償は17万だけ、途中でウソがばれてしまったためです。

ですが訴えたあいおい損保のいう「全額」は79万のこと。そのことを検事が言うと被告はキレました。

「は?全額って17万ですよね?これは17万に対する裁判ですよね?」

「でも、サインしちゃってるよね?」

「その時はそう思ってました。でも今は違います!」

おそらく被告は一円も返す気はないでしょう。そのことがどんどん分かってきます。

 

保釈金はどうしたの?

17万は安くはないですが、普通に働けば返せない金額ではないでしょう。でも被告は1円も返していません。「お金がないから」と言いますが、保釈金は積んでいるのです。

「仲間からお金を借りました」といいます。その金でまず弁償しろよ・・・と普通なら思いますが、この被告には通じません。そして働く気もありません「裁判のせいで就職活動ができないからです」ということです。

赤茶髪のガングロ38歳が就職活動をしているというのなら、それなりの格好をしないといけないはずです。被告の口からはウソしか出てこないのだなと思いました。そして証人として被告の妻が出てきました。

 

保険営業の仕事をしているけど17万は支払えない

妻はがっしりとした被告に比べると小柄で、かつ気の弱そうな声の女性でした。保険営業をしているということですが「17万は生活がきつくて支払えない」ということです。

傍聴席には損保といえど保険業界のスーツたち。その人たちの前でこの発言です。夫婦そろって「だまし取った金は1円も払えない」と言っています。

 

その世界から出てくるな

あいおい損保の人や、被告に追突したドライバーには心から同情します。私はこんなウソだらけの人間と1秒だって関わりたくありません。

ウソをつくのは自由です。でもそれが通ずるかというのは別問題です。ウソはばれれば何かを失うことを忘れてはいけません。証言台で「逆にあいおい損保に聞きたいです!いったい僕はいくら払えばいいのですか?」と叫んでいる被告はこっけいに見えました。

 

通じてないぞ、そのウソ。

 

と思います。横にいるあいおい損保はもとより、裁判長にもまったく通用してないぞ。立証するのがめんどくさいからつっこまないだけで、一番大事な裁判長の心象は最悪だぞ。

人は世界を見たいようにしか見えません。だから被告がウソをごり押すのを咎めることは誰もしません。自分の世界で好きなだけウソをつけばいいと思います。だけどそれと裁判とは別問題です。

人間は社会的な動物です。一人でいるのはそんなに力がでるタイプの生き物ではありません。本当に怖いのは集団になった人間なのです。

被告はごつい体格と押しの強いエネルギーでこれまでウソをごりごりやってきたのでしょう。ですがそれが通用するのは1人か2人まで。あいおい損保や裁判所のような集団にはまったく歯が立ちません。

そのことが良く分かった裁判でした。一人の傍聴人である私は裁判が終わるとそそくさと帰りました。被告に顔を覚えられるのが怖かったからです。