裁判傍聴ブログ

旭川地裁を中心に裁判傍聴記を書いています

人生はやりなおせない!裁判長が断言したヒップホップな34歳

 大麻旭川地裁ではありふれた罪名です。北海道という土地柄、知識があれば誰でも採取できるからです。そんな身近な違法薬物大麻の裁判を傍聴していたら、裁判長の言葉が深く突き刺さったという話。

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被告は34歳男性、髪は短くビシッとしていて、スーツ姿も着慣れている感じ。

「今年の3月までガス会社で働いていました」

旭川市内の高校を卒業後、ガス会社に16年勤めた被告。職場で問題を起こすわけでもなく、勤務態度は良好だったということです。そんな人がなぜ大麻を?

HIPHOPなどブラックミュージックが好きで、その関係で・・・・」

ヒップホップだろうがレゲエだろうが、薬に手を出さない人はいます。でもそっち系の音楽の世界には大麻が好きな人が多くいるのも事実でしょう。実は今回の裁判にはもう一つ罪名がくっついていて「大麻及び向精神薬禁止法」つまりコカインの所持もあったのです。

「○○というクラブでもらいました」

2パケもらって、一つを使用、もう一つをポケットにいれていたら家宅捜索が入って御用となったのです。逮捕されたとき、被告は母親と妹と同居しており、証人として母親がやってきて監督することを宣言していました。

 

ここまでの被告の生い立ちをまとめてみましょう

旭川市内の高校を卒業

地元のガス会社に就職

25歳くらいから大麻にハマる

平成24年に一度大麻で逮捕、起訴猶予

その後結婚、出産。大麻とは縁を切る

平成29年に離婚、半年揉めた

月3万の養育費と2万の慰謝料を支払い続ける

今年の春に会社を退職

 

「なんで月5万の支払いがあるのに会社をやめたの?」という質問に対する答えが驚きでした。

 

ミュージックビデオとか見るのが好きだから、海外でそういった仕事をしたい

 

「16年やったのでそろそろ・・・何するってわけじゃなくて、海外とかで働きたい」

と被告は会社を辞めた理由を話します。ふわっとしてるなあ・・・弁護士もそこに突っ込むと

「いや、具体的には何とも・・・」

えぇ・・・・ ただ、被告の好きなヒップホップを追いかけていきたいという気持ちが「海外で仕事」に繋がっているようです。っていうか法廷の証言台で発言できるレベルのものではないでしょう 何をするって具体性は無いけど、なんとなく海外で働きたい って・・・34歳バツイチ男が。 そんなことは母親もバッチリわかっていて証言ではこう話していました

 

弱さ甘さがあるから

 

被告の母親はまだ若く、60前で働いている様子。受け答えもしっかりとしていて、被告にもう二度と同じことをさせないことを誓っていました。

「息子は離婚のストレスで薬物に手を出してしまったのだと思います」

まあ、確かにそれはあるでしょう。

「そして精神的な甘さ、弱さがあり、それがいけなかったのだと思います」

確かに、それはわかる

「だから、これからは息子に一人で運転させず、お酒を飲む時でもついていこうと思います」

え?と思ったら裁判長から質問

「いっしょに酒を飲むってこと?」

「悪い友人や店に行くこと大麻の採取をさせないということです」

聞いていて「キモっ!」っと思ってしまいました。母親同伴のHIPHOP34歳。これからどうするんでしょ。 被告人のこれから 母親は「父親のところで働かせるつもりです」とのこと。それが監督上一番なのかもしれません。被告は被告で「海外が・・」とか言いつつも、ネットやハローワークで求職しているとのことです。 まあ月5万はキツいよね・・・これから生活の基盤を作り直して、大好きなHIPHOPをやればいいんじゃないかと思いました。最後に被告は 「人生やり直したい」 と言って審理は終了、論告は2年でそれから判決にはいりました。

「2年、執行猶予4年」 まあ、初犯だし当然でしょう。でもこれからがすごかった。

 

人生にやり直しはない

「これは刑事事件とは関係ないかもしれないけど」 とサトウ裁判長が前置きしてこの裁判のクライマックスを迎えます。

「さっき『人生やり直したい』っていってたけど、やりなおしはきかないと思います」

月5万の支払いがあるのに会社を辞めてしまったこと、

母親名義の車に乗って大麻を採取しにいってること、

その他のことも含めると被告人の生活態度に問題があると言わざるを得ない。

「過去を無かったことにはできません。人生はやってきたことの積み重ねです。」

 

後記

母親の愛が犯罪者を産むことがあります。無償の愛は素晴らしいものだけど、子供がそれに浸ったまま年を重ねてしまうとモンスターになるのです。例えばこの被告の脳みそはお花畑でした。「いまもドラッグをきめているんじゃないか?」と見てて思えるほど「海外で仕事を・・・」のあたりはわけがわからなかったです。

初老の検事も怒りと飽きれの表情で被告を見ていました。傍聴席から見ていて、考えていることが伝わってくるような横顔です 。

甘いなあ・・・実に甘い。被告にとって大麻とブラックミュージックに逃避していた過去は無くならなくて、それをベースにスタートしなければいけないのです。現実は月5万の支払いを抱えながら生きていかなくてはいけない。夢のようなことを語るのは気持ちいいけど、そこに甘さがある以上夢は夢でしかありません。

マイク一本でのし上がるような夢を見るのはいいけれど、やってきたことを無かったことにはできません。やってきたことの積み重ねた先にあるのが夢で、被告は積み重ねたことを自分でぶっこわしたんだよ。

 

母親の愛が生んだモンスターの話 

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