裁判傍聴ブログ

旭川地裁を中心に裁判傍聴記を書いています

紋別シカ罠ワイロ事件:被告人質問

使わないとペナルティがあるから使わなければいけない。

訳のわからないお役所の予算の話。

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この事件の続きです。

 

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 5月から始まったこの裁判も3か月が経過しました。今日はついに被告人質問の日です。「午後一杯時間を取ってあります」と裁判長がいうように、今日は最初のハイライトといえるでしょう。

私ももちろん傍聴しました。最初は弁護側からの質問です。それが2時間ほどあり、4時前に検察の反対尋問、残念ながら最後まで聞けませんでしたが、被告の役者っぷりがよくでていた裁判でした。

 

全体的な流れ

 

鹿の罠設置したら国から補助金出るってよ!滝上町もやってるしウチ(紋別市)もやるべ!と紋別市役所農政林務課の課長のノロタが言いました。被告は「えー、罠より銃のほうがいいべ」と反対します。もう冬だし、罠の設置は大変。銃ならコストが低く害獣駆除できます。被告の趣味のハンティングも生かされるでしょう。

「でもさ、街の近くで使えないし、お金でるんだよ?」という課長。予算があるからやらなくてはいけない。それが役所のルールでしょう。

それから協議会とかが立ちあがり、被告はその事務理事を任されました。そのころには被告は「まあ、罠やるってんならやるしかないか」と腹をくくります。ハンティングの知識がある被告は仲間の銃砲店店主とか狩猟器具会社に相談「こんな罠ならいけるべ」と一つのアイデアを生み出します。

それは鹿を追い込むときに使うゲージ。それの入口を一方通行にしてふさげば罠になると被告は思いました。しかしそのアイデアは専門家に否定されます。「きっと失敗するし、うちの商品の目的とは違う」と言われ「売ってすらくれなそうだった」といいます。

結局話を聞いてくれた2つの会社で被告の罠DIYは決行されました。本来なら指名競争入札をしなくてはいけませんが「特別な理由」があるから随意契約で話は進みます。

罠は納品され、さあ設置日も決まりました。その直前に「やっぱり指名競争入札やって」とノロタ課長の一声が入ります。

そこで被告は困りました。なぜならほかの業者は冬の罠の設置に否定的だったからです。やれば被告の業者が入札するのは間違いありませんが、入札をする時間はありませんでした。

そこで「やるかやめるか?」と係長と部下に話します。すでに被告の押す業者に罠を買わせたのは秘密でした。係長は「わかった」といい、自らの権限で随意契約にするのですが。後日

「入札になりました」

と部下がいいます。やはり課長は入札をするべきというスタンス。そこら辺のごり押しは部下の証言で語られてました。

 

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 さて、平成26年1月15日。被告は私財を投じて罠の設置に向かいます。市内の業者に作らせたソリ(4万円)も持ってきています。スノーモビル、餌(7万円)、発電機、ジェットヒーターなどです。

「それらはすべて私が立て替えてました」と被告は言います。

「領収書などは控えてなかったのですか?」という質問に

「はい、不正な処理ですので」ときっぱり。

 

罠の結果

税金を300万投じて設置された罠ですが、全く効果が上がりませんでした。「実績上げて」とノロタ課長。そこで被告は人員を導入して餌をばらまく作戦を立てました。札幌からも人間を呼んで「その宿泊費として98000円払いました」ということ。

予算のための罠に鹿はかからず、そのためにさらに予算を投入したのです。その経費は罠購入費用の300万では足りず、被告は架空請求で払われます。

架空請求は2件行われ、被告はこの罪について認めています。でもあくまで私腹を肥やすためではなく「経費」だったとのこと。

罠の管理をやる予定だった札幌の業者は「管理までしに紋別へ行けない」と言い出し、その経費60万は被告の元に。本来なら協議会に戻すべきお金ですが「経費を算入した不正がバレるとおもって」被告の口座に入れられます。

ここら辺は

 

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ガバガバ予算

被告の論理は完璧にみえました。もし2回目の裁判が被告人質問なら、きっと被告の言い分は正しいと思ったはずです。その論理を支えているのはお役所の予算の意味不明なところでした。

罠購入費用は300万まで認められていますが、そこに設置費用や経費は含まれません

人件費をねん出するため、紋別市の凍結予算に被告は手を付けます。それは害獣死体処理費とかの名目で使われないまま100万ほど据え置かれてました

被告が罠の設置に踏み切ったのも「予算を使わないとペナルティがあるから」というおなじみのものです。役所の予算は不透明な迷路のようなもので、熟練した職員でないと理解不能でしょう。

検察官も苦労してました。資本主義経済とは別のルールで動く役所のお金。その出どころや使いどころを被告につっこむのですが、被告は冷静に答えてました。

「この人、役者だ」と思います。これまで傍聴した情報をあつめると、被告は紋別市役所でやりたい放題、きっと賄賂も受け取っていると思われます。

でも、法廷では「予算の都合で仕方なくお金を立て替えた市役所職員」といった感じでした。とても周囲を恫喝していた人間とは思えません。

決定的な攻撃ができないまま時間が過ぎていきました。最後まで傍聴したかったのですが、時間の都合上途中で退席してきました。